
以下は脳卒中リハビリテーションにおける経皮的迷走神経刺激の効果についてまとめた論文を一部抜粋したものとなります。
動物実験の結果として迷走神経刺激(VNS)は,神経新生や血管新生などを促し脳の可塑
性を高めると報告された.よって,脳卒中患者に対する埋め込み型VNSの臨床応用が試みられたところ,これにより運動機能の回復が有意に向上することが確認された.ただし,埋め込み型VNSの臨床応用は,その侵襲性が大きな障壁となる.そこで,迷走神経耳介枝を非侵襲的に刺激する経皮的VNSの臨床応用が開始された.現時点ではすでに,経皮的VNSと上肢機能訓練の併用が脳卒中後上肢麻痺の回復に有用であることが示されている.経皮的VNSは,脳の可塑性を高めるneural plasticity enhancerになり得る.
脳卒中リハビリテーションにおける新しい治療コンセプトの1つとして,neural plasticity enhancement(脳の可塑性を高める)が注目される.これは,neuralplasticity enhancerとしてなんらかの介入を行うと,それによって脳の可塑性が高められ,リハビリテーション訓練の効果が高まるというものである1).すでに経頭蓋磁気刺激やL-ドパ投
与などが脳の可塑性を高めると報告されているが,新たなneural plasticity enhancerとして迷走神経刺激(vagusnervestimulation:VNS)の有用性が報告され始めた.本稿では,脳卒中後遺症に対するVNS,特に経皮的VNS(transcutaneousVNS:tVNS)について述べる.
〈迷走神経刺激は脳の可塑性を高める〉
頚部への直接的なVNSが大脳にさまざまな有益効果をもたらすことが,すでに動物実験の結果から確認されている2).直接的なVNSによって孤束核が賦活化され,次いでノルアドレナリン系の青班核とセロトニン系の縫線核も賦活される.それによって,神経新生を促し脳の可塑性を高めるノルアドレナリンおよびセロトニンの脳内濃度が高められる.さらには,VNSを適用することで神経新生や血管新生を促すbrain-derived neu rotrophic factor(BDNF)や basic fibroblast growth factor(bFGF)の脳内濃度が高まり,局所脳血流量の増加,脳内炎症の抑制,グルタミン酸毒性の抑制などももたらされる.リハビリテーション訓練に直接的なVNSを加えることで,運動機能の回復が高まることもすでに報告されている.Khodaparastら3)は,大脳皮質の脳梗塞ラットモデルを用いて,麻痺肢の運動中にVNSを行うことで運動麻痺の改善が有意に促進されることを示した.同様にHaysら4)は,脳出血ラットモデルにおいても,麻痺肢の運動にVNSを併用することで麻痺肢の機能回復が有意に促進されることを報告した.
以上からVNSは,脳卒中患者における脳の可塑性を高めて,リハビリテーション訓練の効果を高める可能性があると考えられる.すなわち,VNSが脳卒中患者に対するneuralplasticity enhancerになる可能性が期待される.
全文は以下よりお読み頂けます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/5/59_59.484/_pdf/-char/ja
また、下記論文でも脳卒中後のリハビリテーションに対する迷走神経刺激についてまとめられています。
・Targeted Vagus Nerve Stimulation for Rehabilitation After Stroke
(脳卒中後のリハビリテーションのための標的迷走神経刺激)
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnins.2019.00280/full
・Vagus nerve stimulation in ischemic stroke: old wine in a new bottle
(虚血性脳卒中における迷走神経の刺激: 新しいボトルに入った古いワイン)
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fneur.2014.00107/full


