
パーキンソン病とは、体のふるえ、動作がゆっくりになる、筋肉がこわばり手足が動かしにくくなる、転びやすくなるなどの症状を特徴とする病気です。脳の指令を伝えるドパミンと呼ばれる物質が減ることによって起こります。
てんかんの補助的な神経調節療法として迷走神経刺激(vagus nerve stimulation :VNS)がある。これは、外科的に刺激装置を埋め込むことにより行われる治療であり、既にFDAの承認を受けている。VNSは、孤束核や青斑核への直接的な作用を通じて、様々な脳領域に影響を与えるとされている。VNSの効果としては抗炎症作用が示唆されており、幅広い炎症性疾患への応用の可能性が提唱されている。パーキンソン病の病態は神経炎症に関与しているとされることから、パーキンソン病の治療にも有効であると考えられる。
近年、携帯可能な非侵襲迷走神経刺激(non-invasive vagus nerve stimulation :nVNS)装置の開発により、この治療法が簡略化された。注目すべきは、パーキンソン病患者におけるnVNSの適用が、歩行時に足をうまく踏み出せなくなるパーキンソン病の運動症状であるFreezing of Gait (FOG)に対して有益な効果を示したことである。この研究では、FOGを有する患者に120秒の急性nVNSを2回適用することで、歩行やUPDRS Part IIIスコアが改善することが確認された。これらの短期的な効果は、FOGの発症に関与する脳領域である青斑核からのノルアドレナリン投射を含む中枢神経回路の間接的活性化による可能性が最も高いと考えられている。Morrisらは、頸部nVNSを単回適用後、パーキンソン病患者の歩幅変動が有意に改善することを示した。
さらに、頸部nVNSの長期効果を確認するために1日3回、1ヶ月間nVNSを適用した無作為化二重盲検偽刺激対照クロスオーバー試験では、パーキンソン病患者の運動機能の改善と血清炎症マーカーの有意な減少が確認された。興味深いことに、nVNS後の血清バイオマーカーの分析では、脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor)の増加とともに神経炎症マーカー(Tumor Necrosis Factor-α)の減少が見られ、神経可塑性の増加が示唆された。神経炎症がパーキンソン病の病因に関与していることを考えると、nVNSが疾患を改善させる作用を持つ可能性があると言える。


