
コンテンツ
- 1 HRV(心拍間隔変動)測定の説明と理解の為のガイドライン
- 2 時間領域分析
- 3 周波数領域分析
- 4 5分間分析
- 5 高周波帯
- 6 低周波帯
- 7 超低周波帯
- 8 5分間トータルパワー
- 9 低周波/高周波(LF/HF)比率
- 10 正常化単位での低周波パワーと高周波パワー
- 11 24時間周波数領域分析
- 12 極超低周波帯パワー
- 13 トータルパワー
- 14 時間領域と周波数領域測定の相関関係
- 15 HRV測定の安定性と再現性
- 16 自律神経機能に対するストレス効果
- 17 ストレスと感情のコントロール
- 18 自律神経律動異常の臨床的相関関係
- 19 加齢と HRV
- 20 サイクル期間依存
- 21 AAR 24時間自律神経バランス・プロフィール
- 22 低周波パワー 対 高周波パワー
- 23 まとめ
- 24 AAR 周波数領域分析まとめ
- 25 24時間周期リズム分析
- 26 自律神経失調
- 27 心臓障害と 24時間周期リズム
- 28 うつ病、疲労と 24時間周期リズム
- 29 24時間周期リズム分析セクション
- 30 高周波
- 31 低周波
- 32 超低周波
- 33 正常化単位での低周波パワーと高周波パワー
- 34 リズムパターン分析
- 35 まとめ
HRV(心拍間隔変動)測定の説明と理解の為のガイドライン
HRV 分析は基本的に2 つの方法、パワー・スペクトル分析として時間領域分析かもしくは周波数領域分析で行うことが出来、夫々に長所と欠点がある。 時間領域分析は最も簡単に計算が行える半面、自律神経のバランスもしくは自律神経の異なった部門(交感神経と副交感神経)のパワーの時間的配分の情報を量的に測定することが出来ない。 最も重要な測定値は、心拍、SDNN(標準偏差値)、SDNN インデックス(標準偏差値インデックス)とRMS-SD である。
時間領域分析
SDNN はECG の24 時間記録における正常化された全てのRR 間隔の標準偏差値である。 測定及び報告は1000 分の1 秒単位で行われる。 これは24 時間の記録期間中に心拍間隔変動の原因となった全ての要素の増減が測定に表れる。 この要素には、ホルモンの影響に反応すると考えられる心臓の本来の機能であるゆっくりとした変動も含まれている。 ホルモンの循環に反応する心拍数の変化は非常にゆっくりとしているが、自律神経の直接の興奮によって引き起こされる変化よりは長く継続する。
SDNN 値の減少は左心室機能障害、クレアチンキナーゼ(筋肉内の酵素で、クレアチン酸の合成分離を触媒する)の最高レベル、とキリップ分類(急性心筋梗塞の臨床所見による重症度分類)に関連しており、左心室駆出分画(1回心拍出量と心室拡張終期容量の比、Starling 曲線上行脚勾配を意味し、心収縮機能の指標として好んで用いられる)もしくはその潜在的な可能性のような既に確立された危険要素とは別に、心臓発作による突然死や心室頻拍(脈拍100 以上のときを言う)を予見出来ることがわかった。
特別任務班報告書によると、SDNN 値が50/1000 秒の場合ストレス度が非常に高く、100/1000秒の場合はややストレスがある値としてみることを推薦している。
SDANN は、ECG の24 時間記録の内の5 分毎のそれぞれのセグメントの平均正常RR 間隔(心拍の平均値)の標準偏差値である。 この測定も1000 分の1 秒単位で行われる。 この測定はSDNN と相関関係にあり、大抵余分であると考えられている。
SDNN インデックスは、ECG の24 時間記録の内の5分毎の夫々のセグメントの,全ての正常RR 間隔の標準偏差値の平均である。 従って、心拍変動に5 分以内で影響を与える要素についてのみの変動についての推定値である。 24 時間の記録を288 の5 分間記録に分割し、夫々のセグメント内の全てのRR 間隔の標準偏差値を計算する。SDANN インデックスはこれら288 の数値の平均である。 インデックスは自律神経が心拍間隔変動に与える本来の影響を測定するものと考えられる。
SDANN インデックスとSDANN との違いは、5 図に見られるように、心臓移植のデータにおいて明らかである。 この患者は、SDNN は83 と比較的通常の値であり、SDNN は11 と非常に低い。 これは損傷のない移植された心臓はホルモンその他の影響には反応するが、自律神経支配除去の為、自律神経による調整には反応しない事を意味する。 従って、心臓移植を受けていない患者でSDNN が正常でSDNN インデックスが低い場合は、心臓そのものではなく病理学的影響である可能性が強い。 心臓移植を受けた患者でSDNN が高いケースはこれまで無く、この値で患者の死亡や拒絶反応を予見出来るかどうかは今のところわかっていない。
SDNN インデックスが普通より高い患者の場合は、通常交感神経系と副交感神経の活動が普通より高い。 今後心拍間隔変動が常に普通よりもはるかに高い患者の分析を続ける事により、それらの臨床的病理学的関係がより明らかになるであろう。
RMS-SD は、連続する心拍間の差の2 乗の平均をルートで割った値である。 この値は、まず連続するQRS 波間の時間の違いを1000 分の1 秒単位で計算することによって得られる。夫々の値は2 乗され、全体をルートで割る前に平均化される。RMS-SD は心拍数の短時間変動を反映し、心臓の副交感神経調整を示すHRV の高周波帯の心拍間隔の変化を推定する為の、主要な時間領域測定である。
周波数領域分析
パワー・スペクトル密度分析が時間領域分析に比べて優れている点は、パワーが周波数に関してどのように配分されているか(変動)、従って24 時間のどの時点をとっても自律神経のバランスが量的に測定できる事である。 加えて、自律神経の部門である交感神経と副交感神経を代表する異なった周波数(VLF-超低周波、LF-低周波、HF-高周波)をプロットすることにより、夫々の部門の24 時間周期のリズムを量的に測定・調査することが出来る。 心拍の拍動間の変動から、パワー・スペクトル分析を使って可能な情報を取り出すには、2 つの異なったアプローチが使われる。 ひとつは5 分間分析もしくは短時間分析と呼ばれ、自律神経が心拍に与える影響を測定するものである。 もうひとつは、24 時間分析もしくは長時間分析と呼ばれ、温度調節やレニン・アンギオテンシンや他のホルモンの要素に関連しておこる長時間調節メカニズムにより発生する、心拍数の非常にゆっくりとした変化の情報が得られる。 パワースペクトル分析の主な欠点は、計算が複雑で変数の全てを計算する為時間がかかり大きなコンピューター容量が必要な事である。
5分間分析
5 分間分析は、自律神経の心拍数への影響と自律神経の夫々の部門の24 時間リズムを知る為に使われる。 HRV 記録を5 分間に分割することにより、ホルモンその他の影響を反映すると考えられる心拍の超低周波変化が取り除かれる。 FFT(ファスト・フォリエ・トランスフォーム)は、夫々の5 分間セグメントにおける3 つのスペクトル周波数帯を調べるのに使われる。
パワーの分布とVLF、LF およびHF のピークの中心周波数は固定されておらず、呼吸と心臓の自律神経調節に関連して変動する。
夫々の周波数帯内でのパワーの測定は、1000 分の1 秒単位で測定した値を2 乗した絶対値で表されている。 HRV のパワースペクトルの目盛り(2 乗した絶対値)は、最初はやや判りにくい。 縦の目盛りは、心拍間隔が1000 分の1 秒単位で計られているため1000 分の1 秒単位になっており、これらの時間的な心拍間隔がスペクトル分析を行う為の信号を作り出している。パワースペクトルが計算されるときは、値は常に2 乗され、従ってHRV 分析の場合の縦軸は、拍動の時間的間隔から作られる波形によってスペクトルが作られるところから、1000 分の1秒単位を2 乗した目盛りになっている。
報告書の24 時間リズム分析には、異なった周波数帯の個々の5 分間セグメントの1 時間の移動平均値がプロットされている。 これらのグラフは、自律神経の夫々の部門の活動の測定結果がある一定の期間中変化し、又相互関係においても変化することを示す。 大切なことは、LF とHF パワーは自律神経の心臓に対する働きの変動を示しているであって、自律神経の平均的活動のレベルの変動ではないということである。 従って、HRV が低いということは自律神経の全面的遮断かもしくは交感神経の活動が非常に激しいかである。 このため、HRV 値が低い場合は、正しい判断をする為に心拍数の平均値を調べることが非常に重要になる。
高周波帯
HF スペクトルは、0.15~0.4 Hz 間の、288 の夫々の5 分間セグメントのパワーである。 この帯域は、副交感神経もしくは迷走神経の活動を反映しRSA(呼吸洞性不整脈)として知られており、呼吸サイクルに関連する心拍に同調する為しばしば“呼吸帯”と呼ばれている。 心拍数は息を吸い込むとき増大し、吐き出すとき減少する。 パワースペクトルのHF ピークの振幅は通常ゆっくりとした深い呼吸で増大させることが出来る。
心拍の変動と呼吸を結びつけるメカニズムは複雑で、中枢神経と反射神経の相互作用に関係している。 これまでの多くの研究で、迷走神経の全面的遮断はHF の振幅を除去し、LF 帯のパワーが減少させるのがわかっている。 診療上のモニタリングでは、HF 帯はトータルパワーのわずか5%を占めているに過ぎない。
副交感神経活動の減少は、これまで心臓病理学の分野でストレスや恐怖や不安や心配を抱えている患者にみられている。 また、副交感神経の活動の減少は、加齢によるHRV の減少が理由であるとも考えられている。 若い健康人において、夜間HF 帯の活動の増加が顕著で昼間減少することは珍しいことではない。 人によっては、痛みがあるときは痛みが無いときに比べて、夜間のHF 帯の増加が通常よりもはるかに高い例がある。 今のところ理由はわかっていない。
低周波帯
低周波(パワー・スペクトルが0.04~0.15 Hz)帯は、交感神経と副交感神経の両方の活動を反映する。 しかしながら、長時間記録においては殆どの場合、LF 帯は交感神経の活動をかなり正しく示す。 例えば、偏頭痛の為交感神経の活動が高く、LF の変動が健康人のそれに比べてかなり高い患者の場合、プロプラノロール(ベータ-アドレナリン受容体遮断薬)でそれが下げられるという事は、この帯域におけるベータ-交感神経調整を明らかに実証している。
副交感神経の影響は、呼吸数が1 分間7 回以下の場合か、もしくは深呼吸をしたときに特に顕著である。 この帯域は、時には圧受容器や血圧波としての活動や同調を反映するところから、多くの研究者により“圧受容器帯”もしくは“中間周波数帯”と以前呼ばれていた。 同様に、今日VLF と呼ばれているのは、以前LF 帯と呼ばれていた。
このことは、古い出版物を見るとき混乱の原因になるので重要である。深い睡眠やリラックスした状態、もしくはフリーズ・フレームやハート・ロックインのような自律神経のバランスを取り戻すテクニックを使ってHRV のパターンと呼吸が同調するとき、同調は0.1 Hz の周波数の近くで起こる。
これはLF 帯の中央である為、交感神経活動の大きな増加のように見えるが、実は副交感神経活動の増加と血管運動の同調であることが多い。
高度なモデルによる技術を使うと、LF 帯のトータルパワーの約50%が、中枢神経によって起されたであろう洞結節への信号であり、残りのパワーの殆どは動脈圧フィードバックループ内P1-33 自律神14 経分析報告書(AAR)JP061203の同調である事がわかる。
交感神経は0.1 Hz 以上では働いているようには見えない反面、副交感神経は0.05 Hz まで働いているのが判る。 時々呼吸数が少なくなる患者においては、副交感神経活動がLF 帯にあふれ出ていく可能性がある。 LF 帯の下限およびVLF 帯においては、血管運動と温度調節活動も又心臓に関連した交換神経活動に加えてパワーに影響を与える。
神経活動の変動と神経活動の平均のレベルとの正確な関係については、まだ完全に解明されていない。 通常、神経活動の変動は神経活動の平均のレベルと直線的に関係していると考えられているが、相反する神経通路間に均衡が存在しており、その均衡が無活動もしくは飽和状態での均衡ではない時にのみ多分そうであろうと考えられている。
超低周波帯
超低周波帯(VLF)は、HRV パワー・スペクトルが0.0033 Hz~0.04 Hz の間のパワーを言う。生理学的説明及びVLF コンポーネントの発生が関わるメカニズムの完全な説明は、LF およびHF コンポーネントほど明確でない。
しかしながら、自律神経の影響に加えて、この周波数帯にみられる他の長期的調節メカニズムは、温度調節やレニン・アンギオテンシンや他のホルモン要素に関係している。 心臓に対する自律神経の神経支配機能を持たない心臓移植患者の場合、この周波数帯での活動は殆ど無い為この周波数帯での活動はほとんどが自律神経の影響によるものであることを示している。従ってVLF 帯は交感神経機能の追加的指標を提供することになる。
睡眠時無呼吸の問題を抱える患者は、睡眠時無呼吸中VLF 帯が増加し、この増加が呼吸停止もしくは低酸素血症の発生と同調して増加することがわかった。 言い換えれば、VLF 帯のパワーは空気の交換が無いとき増加するということである。 圧反射腹の血管活動部分における自己振幅によるVLF と、睡眠時無呼吸中のVLF の増加は、交感神経の刺激の直接の結果であると言われている。 この考え方は、睡眠時無呼吸中、筋神経の交感神経活動の増大が直接記録できる所からも支持されている。
一般的に疲労や不整脈を持つ患者において、VLF パワーとSDNN インデックスが低く、SDNNとULF パワーが比較的正常であることがしばしば見られる。 VLF 帯は、LF 帯やHF 帯よりもあらゆる原因に関わる死亡により強く関連していることもわかっている。 更に、VLF 帯における低いパワーが、不整脈死に関連していることもまたわかっている。
5分間トータルパワー
5 分間トータルパワーは、VLF,LF,HF パワースペクトル帯を含む個々の5 分間セグメントのトータルパワー(0.4 Hz 以下のパワー)の平均である。 この測定は、交感神経活動を主要素とする自律神経活動全体の指標となるものである。
低周波/高周波(LF/HF)比率
LF/HF 比率は、LF パワーとHF パワーの比率である。 値が高ければ交感神経活動の増加もしくは副交感神経活動の低下を示す。 自律神経報告書3 ページの周波数分析まとめに、正常範囲がグラフで示されている。 この比率は、交感神経と副交感神経の全体のバランスを量的に表すのに使われる。
正常化単位での低周波パワーと高周波パワー
HRV の絶対値(1/1000 秒の2乗)が、VLF、LF 及びHF 帯における自律神経活動を評価するのに使われるとき、LF とHF 帯も正常化された単位で測定される。 正常化されたLF とHF帯は、LF とHF コンポーネントのVLF パワーの変化の影響を最小限に抑えるのに役立つ。 これは、自律神経の交感神経と副交感神経のバランスを強調する事が目的である。
本質的に、正常化のプロセスは、24 時間を通じて交感神経と副交感神経の短時間心臓血管リズムの相対的パワーを比較する為の道具である。 自律神経が交感神経もしくは副交感神経において大きな変化が起こっている間でも、何とかバランスを維持することが出来るのは興味深い。
正常化されたHF 値を計算するには、3つの周波数帯の夫々のパワーが先ず最初に決められなければならない。 その後、トータルパワーからVLF 帯を引き、HF パワーをその値で割る。その結果に100 をかけるとY(縦)軸の0 から100 になる。
HF 正常値 = { HF /(トータルパワー – VLF)} x 100
正常値と絶対値は共に、自律神経報告書の24 時間周期リズム分析セクションにプロットされている。 正常化されたプロットにおいて、殆どの若い健康人のHF 値は睡眠中はLF 値の上にあり、起きている間LF 値はHF 値のはるか上にある。 この交差は加齢と共に減少し、それは交感迷走バランスが加齢と共に交感神経バランス移行していくことを示している。 これは副交感神経活動の減少が原因であり、その減少度合いは年とともに加速する。
24時間周波数領域分析
24 時間分析或いは長時間分析は、24 時間(分析の前に5 分間のセグメントに分けることをしない)記録全部のスペクトル分析である。 この分析の中にはULF(極超低周波 0.0033 Hz以下)周波数帯の分析も含まれている。
極超低周波帯パワー
ULF 値は0.0033 Hz 以下の周波数帯におけるパワーを言う。 ULF 帯はSDNN と高い相関関係にあり、この値が低いと心筋梗塞後の死亡を予見出来ることがわかっている。
トータルパワー
トータルパワーの値は、24 時間記録中の全ての周波数帯(ULF、VLF、LF およびHF)のパワーを示す。 この測定におけるパワーの殆どはULF 帯からのものである。 従って、トータルパワーが心臓発作による突然死や、心筋梗塞経験患者のあらゆる原因に基づく死の高いリスクに関連している事は驚くべきことではない。
時間領域と周波数領域測定の相関関係
時間領域と周波数領域測定の値には、表1 に示されるようにいくつかの相関関係がある。 例えば、時間領域測定であるSDNN とSDANN は、トータルパワーとULF パワーの周波数領域測定と相関関係にある。 SDNN インデックスは、5 分間トータルパワーとVLF パワーに相関している。 HRV 評価の2 つの周波数領域測定法、すなわち5 分間分析と24 時間分析内では、24 時間分析のHF,LF,およびVLF コンポーネントは5 分間分析と高い相関関係にある。この2 つの測定方法では、VLF、LF とHF 値は本質的に同じ結果になり、従って混乱を避ける為、周波数領域まとめの部分のこれらの周波数帯については5 分間分析値のみが報告されて
いる。
HRV測定の安定性と再現性
我々の研究を含む複数の研究において、5 分間で得られるHRV の短時間測定は、一時的動揺の後急速に基準レベルに戻ることが証明されている。 HRV を24 時間測定する研究では、HRV値は通常人及び心筋梗塞経験者や心室不整脈の人々において安定していることが証明されている。 いくつかのデータは、これらのHRV 値が長期に渡って安定していることを示しているが、この確認にはもっと多くのデータが必要とされる。 このように24 時間インデックスは安定しているように見えプラシーボ効果からも影響を受けないところから、治療効果を評価するには理想的な変数である。
自律神経機能に対するストレス効果
低いHRV が加齢や、自律神経で調整されるホルモン反応の低下や、突然死の増大に関係していることはよく立証されている。 最近の研究では、うつ病、パニック障害、不安や心配が自律神経機能に影響を与え、一般に副交感神経活動が減少する原因になることがわかった。 交感神経活動の増大は心室細動限界値の低下と細動のリスク増加に関連しており、副交感神経活動の増加が心臓を守るのと対照的である。 これらの発見で、精神的および感情的ストレスが、何故急性心筋梗塞や高血圧が原因の心臓死のリスク予見につながるかが説明できる。
我々は、異なる感情の状態やストレス因子が自律神経機能に劇的に影響するのを観察できた。患者がストレスを抱えたり感情的になっている場合、ストレスに対する彼らの感情的反応や対応をどのようにコントロールするか教えることが出来る。
ストレスと感情のコントロール
自己管理のテクニックは、個人に精神的及び感情的ストレスに対するより大きなコントロールを与え、交感迷走神経バランスを改善し、自律神経がその役割を果たす非常に幅広い種類の病気の状態に大きなインパクトを与える事ができる。 虚血性心疾患、高血圧や糖尿病は全てそのような介入の主な目標である。 事実、最近の実験の結果は、感情的苦しみの低減や交感神経の刺激や気分の改善が心臓死の長期的リスクを著しく減らしうることを示している。 加えて、冠状動脈疾患を抱える患者の場合、精神的ストレスによる虚血のケースは肉体的ストレスによる虚血に比べて心臓発作もしくは心臓死のリスクが3 倍も高いことがわかった。 又、肯定的感情を表す個人はストレスも少なく、病気になりにくいことも判った。
IHM は、患者が抱えているかもしれない精神的及び感情的ストレスの度合いを医師が評価出来る為の生理学的分析方法を開発した。 IHM は又、精神的及び感情的ストレスを抱える患者に対し、医師が患者に提供できる2 つの重要な介入テクニックを開発した。 これらのテクニックは、ストレスを軽減し、自律神経機能とバランスを改善し、粘膜免疫性を高め、DHEA とコルチゾンのレベルと比率を改善するものである。
自律神経律動異常の臨床的相関関係
疲労、偏頭痛、うつ病、線維筋痛症、腸過敏症、パニック障害、吐き気、めまい、不整脈、高血圧、低血糖、不眠症、不安、喘息、月経前期症候群、僧帽弁逸脱症候群
加齢と HRV
多くの研究で、24 時間HRV 値が年齢と共に低下することがわかっている。 しかしながら、HRV のコンポーネントは異なった割合で変化する。 本来HRV は妊娠時及び出産後初期の段階で増加し、早ければ5 才から10 才で低下を始めるのが判る。 異なった年齢層でHRV が違うのは、副交感神経機能の低下によるものである。 これまでのひとつ研究で、加齢によるHRVの低下は規則正しい運動によって緩和できることがわかっており、栄養不良のネズミを使ったいくつかの研究でも、年齢に関係した自律神経機能の変化を緩和できることが立証されている。
図6 は、加齢と共に24 時間記録の心拍数が減少していくのを示している。図7は、年齢10 歳から70 歳の間で加齢と共に時間領域変動が減少しているのを示している。
このプロットより、トータルパワー、SDNN、及びSDNN インデックスは、ほぼ同じ率で減少している。
図8は、加齢とともに減少する周波数領域変動をプロットしたものである。 HF パワーの減少が他のどれよりも激しく、これは副交感神経機能が他のシステムの機能に比べてより大きな割合で減少していることを示している。 これはLF/HF 比率が年齢と共に増加している図9にも表れている。
図10 は、正常化単位でのLF パワーとHF パワーを年齢との関係でプロットしたものであり、年齢と共に分岐している。 年齢幅と夫々の年齢幅の分岐値が表2 と3 に時間領域と変動周波数領域変動で示されている。 加齢と共に減少するHRV は、病気による低いHRV と加齢と共に自然に減少するHRV との違いを見分けるのがより難しくなる為、年を取った人のリスク予見の為の値として限界がある。
サイクル期間依存
健康人における心拍数と心拍間隔変動の関係は重要である。 心拍数が増えると心拍間隔変動は減少する。 これはサイクル期間依存と呼ばれ、健康な老人において、かなりの年齢層でも程度の差はあっても一貫している。
しかしながら、虚血性心臓疾患を抱える患者は心拍数がかなり低下しても心拍間隔変動は低くなり、最終的には心拍数が減少しても心拍間隔変動は増加せず、従って心拍数と心拍間隔変動の相関関係が無くなる。 心拍数と心拍間隔変動の関係は、図11 の24 時間心拍数プロフィール及び心拍数変動インデックス・プロットに明らかにみられる。 運動その他の肉体的活動で心拍数が大きく増加したとき、心拍間隔変動は同時に減少する。
AAR 24時間自律神経バランス・プロフィール
24 時間自律神経バランス・プロフィールは、24 時間記録の5 分間HF 帯(副交感神経)対5分間LF 帯(本来的に交感神経)の平均パワー・スペクトル値をプロットしたものである。 パワースペクトル値は自然対数値(Ln)に変換され、従って若い患者と年を取った患者の間で発見された非常に広い幅の値が同じグラフにプロットできる。 これにより医師は、患者の値を他の個人との値で関係づけられ、また高周波数パワーと低周波数パワーとのバランスを明らかにする事が出来る。
小さな長方形の箱は患者の値を示し、9 つの箱は自律神経の絶対値の関係と交感神経と副交感神経のバランスをわかりやすく定義している。 このタイプのプロットは,交感神経と副交感神経のバランスを量的に求める多くの科学者によってこれ迄使われてきたLF/HF 比より好まれる。 真中の長方形の箱は患者の正常域を表している。 加齢とHRV のセクションで説明したように、加齢に関連して減少するHRV は異なった割合で起こる。 正常域の高周波及び低周波の境界は、患者の年齢により自動的に適切な値に調整される。
8 つの区域は以下のように広く特徴付けられる:
区域1:副交感神経-高/交感神経-低
区域2:副交感神経-高/交感神経-通常
区域3:交感神経、副交感神経共に高
区域4:交感神経-高/副交感神経-通常
区域5:交感神経-高/副交感神経-低
区域6:交感神経-通常/副交感神経-低
区域7:交感神経、副交感神経共に低
区域8:交感神経-低/副交感神経-通常
低周波パワー 対 高周波パワー
HF パワー(副交感神経)はY 軸にプロットされ、2 つの横線(点線)の間の区域は正常値の巾を示す。 患者の値が下の横線より下方であれば(区域5、6、7)、患者のHF パワーは正常値以下ということである。 値が上の横線より上方であれば(区域1、2、3)、患者の副交感神経は過大の活動をしているということである。
LF パワーはX 軸にプロットされ、2 つの縦線(点線)の間の区域は正常値の巾を示す。 患者の値が左の縦線より左側にあれば(区域1、7、8)、患者のLF パワーは正常値以下と言うことである。 値が右の縦線の右側であれば(区域3、4、5)、LF パワーは正常値以上ということである。
HF およびLF 値が共に低い個人は珍しいことではない。 その場合は、値は区域7 にプロットされる。 又、LF パワーが低く、HF パワーが通常か境界線上にある個人の場合もこれまで多くみられた。 この傾向は、ストレス度が高く疲れや消耗を訴える個人に見られた。パワー・スペクトル絶対値とHF 及びLF パワーの対数値は、周波数領域分析まとめのページの下のほうに年齢に応じて調整された正常値と共に示されている。
まとめ
24 時間バランス・プロフィールでは、パワー・スペクトル値は自然対数(Ln)に変換され、従って若年及び老人の間の非常に広い幅の値を同じグラフ上にプロットできる。 長方形の箱は患者の値を示し、9 つの箱はHF とLF のパワーのバランスを表す。 正常域は患者の年齢によって調整されている。
AAR 周波数領域分析まとめ
このプロットは、24 時間記録の平均ULF、VLF、LF およびHF パワーをグラフで表したものである。 自然対数値(絶対値から導かれた)が、若年と老人の間の広い幅の値を表示できるよう縦軸にプロットされている。 各棒グラフの位置にみられる縦の黒い区域棒は患者の年齢における正常範囲を示している。 LF/HF 比はパワー測定グラフの右側にプロットされており、これも対数値で示している。 患者の値が区域棒の上端に近ければLF 比は高く、下端に近ければLF 比が低いことになる。 絶対値と対数値、及び年齢にあわせた夫々の指標の正常値はグラフの下方に示している。
5 分間分析と24 時間分析は、本来的にはVLF、LF およびHF の測定において同じ値を示すので、混乱を避ける為、これらの周波数帯の報告には5 分間分析の値のみを使う。 ULF 及びトータルパワーは24 時間スペクトル分析から計算したものである。
24時間周期リズム分析
24 時間周期リズムは、厳密に言えば、1 回のサイクルを24 時間から26 時間とする主な周波数におけるリズムを言う。 従って、出来れば2 回のサイクルの測定が望ましいが、1 回のサイクルを測定する最低の記録時間は24 時間である。 人間の24 時間リズムの例に関して書かれた文献はこれまで数多くあるが、最も有名なものは夜間に低下する血圧と心拍数に関するものである。 これらのリズムを妨害すると、飛行機による旅行や仕事のシフトによって起こる不眠症や異常な傾眠のような多くの問題を引き起こす。 血漿カテコールミン、コルチゾルホルモン、血小板凝集性、αアドレナリンの調子やフィブリノーゲン活動もまた、午前6 時から正午12 時の間に波の山が起こる24 時間周期パターンを示す。 朝起こる急性心臓発作がこれらのリズムの山と一致しており、また起床以前または起床時の自律神経の急激なバランスの変化に一致しているという重要な事実により、多くの研究者はこれらの間に関連があると考えている。
24 時間周期リズムに関連するメカニズムは複数であると考えられる。 中枢神経内の24 時間周期リズムの主要な源は、視床下部であると考えられている。 また外的要因も間違いなく影響していると考えられている。 心拍数を末端で測定する場合は、その24 時間周期変動に影響を与える他の要素を、自律神経や循環ホルモン、局部ホルモンを含めて考えられなければならない。
一般の健康人は、著しい24 時間周期リズムを示す。 HF パワーもしくは副交感神経コンポーネントは、睡眠中は高く日中は低い。 反対に、LF パワーもしくは交感神経活動は日中は高く夜間は低い。 日常の生活には、自律神経活動やホルモン分泌の変化を通じ心臓血管系に影響を与えるさまざまの刺激があり、異常なリズムが見られたときにはこれらの影響を考慮に入れる必要がある。 その例として、飛行機旅行や勤務時間の変化による時差ぼけや、夜遅くの食事や日中のコルチゾールリズムに影響を与える運動や活動がある。しかしながら、痛みのような他のタイプのストレスも又コルチゾールのレベルやリズムを変える事が出来る。
殆どの健康人においては、夜間及び起床前にVLF、LF 及びHF パワーの増加が起こる。 自律神経活動のこの増加は、朝のコルチゾール分泌のピークと関連していると考えられる。 自律神経機能の減少がホルモン反応を減少させた例も、いくつかの研究で判っている。 しかしながら、コルチゾールリズムと自律神経機能との関係は完全には解明されていない。 自律神経の活動がコルチゾールの分泌に先立って起こるのか、またはコルチゾールの分泌が早朝の自律神経活動の増加に先立って起こるのか不確かである。 これらは非常に重要な問題であり、現在我々の研究所で調査中である。
自律神経失調
心臓血管に影響を及ぼす自律神経失調は数多くある。 これらは局在失調と全身失調に分けられる。 心臓移植やシャガス病は共に局在失調である。 しかしながら心臓移植の場合は、外的心臓自律神経は断たれているが内在神経節は保存されており、それとは反対にシャガス病の場合はコリン作用性神経叢が損傷を受け、その為自己免疫プロセスもおそらく損傷を受けている。 全身失調は糖尿病、血管迷走神経性失神、初期自律神経失調、シャイ/ドレーガー症、多発性硬化症、脳腫瘍や脊髄腫瘍、腎機能疾患や頚動脈洞過敏症などがある。 糖尿病のような特定の失調においては、自律末梢神経障害が先ず交感神経遠心経路を通じて心臓迷走神経の伝導に影響し、その後病気への過程を経ることになると考えられる。 逆に、ド-パミンヒドロキシラーゼ欠損症のような他の障害の場合は、交感神経伝導のみの減少が起こり心臓副交感神経伝導は影響を受けない。 局在及び全体心臓自律神経障害については詳細をもって他所で述べることにする。薬物は、しばしば副作用として自律神経障害の原因になることは心にとめて置くべきである。
心臓障害と 24時間周期リズム
虚血性心臓疾患、冠動脈疾患の患者やうつ病もしくは不眠症を抱える患者が、他の病気の患者よりも24 時間周期リズムに乱れがあることはよく知られている。 臨床的及び実験的研究では、冠動脈疾患を抱える患者は鈍い副交感神経リズムを持つことが判っている。 高血圧患者においては、病状の悪化と共に24 時間周期変化の減少が平行して起こることが判っている。
これらの例における24 時間周期リズムの減少は、副交感神経活動の減少によるものであり、交感神経の刺激に対し心拍の調節が出来ない為である。 糖尿病もまた自律神経による24 時間周期リズムの調節機能を損ない、これは糖尿病患者にみられる高い心臓血管障害の原因の一部と考えられている。
うつ病、疲労と 24時間周期リズム
24 時間周期リズムの変化は、情緒不安定の患者にも見られる。 日中の気分が変化する抑うつP1-33 自律神27 経分析報告書(AAR)JP061203状態の患者は、夜間気分が改善すると副交感神経活動が増加する事がわかっている。 反対に、夜間気分の改善をみない患者は副交感神経活動の増加がみられない。
コルチゾールレベルの日中の変化は、身体の最も強力な同調ホルモンリズムのひとつである。コルチゾールの分泌過多を伴う24 時間周期リズムの変化は、抑うつと疲労を抱える患者に見られている。 抑うつ状態の患者の中には、通常人より数時間前の早朝にコルチゾールリズムのピークがある事もわかっている。 コルチゾールピークのこの移動が通常の睡眠サイクルを妨げ、レム睡眠を減少させると考えられている。 身体の睡眠/覚醒リズムの整合性の欠如が健康や行動を損ない病気に導くことは容易に理解できる。 線維筋痛症は、通常の深い眠りの低下もしくは眠りを減らす妨害によっても起こりうる。
24時間周期リズム分析セクション
24 時間周期リズム分析は、心拍数やHF、LF、VLF 周波帯におけるパワーもしくは活動、正常化単位でのLF およびHF パワーを1 時間毎の移動平均の形で目で見て判るようにしたものである。 グラフ上の最初のデータポイントは、それに先立つ30 分間記録の5 分毎のセグメントの平均であり、次に続く30 分間について同様に次のデータポイントが記録される。 夫々のポイントは、平均値が5 分毎にプロットされる。
HF、LF、VLF の為のY 軸の単位は1/1000 秒単位を2 乗したパワーである。 単位が1/1000秒であるのは拍動間隔が1/1000 秒単位で測定されているからであり、スペクトル分析に使われる信号はこれら拍動の時間的間隔によって作られる。 パワースペクトル値がプロットされる時、単位は1/1000 秒の2乗になる。横軸は時間軸であり、患者に記録計が取り付けられた時点でスタートする。 夜間(真夜中から午前6 時)は、うすい灰色で陰影を付けている。
高周波
高周波スペクトルは、HRV パワー・スペクトルの0.15 から0.4 Hz 間の周波数帯の、288 の5分間セグメント夫々の1時間毎の移動平均値をプロットしたものである。 一般的に、HF 帯は夜間安定して増加し、起床の直前にピークに達する。 しかしながら、夜間にはもうひとつもしくは2つのはっきりとしたピークがしばしばみられる。 これらのピークは、睡眠サイクルの初期もしくは後期あるいは時には両方で起こる。 図13 は、52 人の健康人を対象にして、夫々の周波数帯と心拍数における平均24 時間周期リズムを示したものである。 平均において、起床直前にHF 活動は最高になり、その後昼食時間まで減少していくのが良くわかる。 午後1時の昼食後、全ての周波数帯は低下し心拍数のみが増加する。 正常化されたデータを見ると、交感迷走神経バランスはこの期間中変化が見られない。 ところが、夜間は副交感神経活動が活発になりバランスがシフトする。
低周波
低周波スペクトルは、HRV パワー・スペクトルの0.04 から0.15 Hz 間の周波数帯の、288 の5分間セグメント夫々の1時間毎の移動平均パワーをプロットしたものである。 この周波数帯は、副交感神経と交感神経活動及び圧受容器における同調を反映する。 夜間呼吸がゆっくりとなる人は、副交感神経活動によりLF 帯が増大する事を心にとめておいて頂きたい。 反対に、VLF 帯の活動が増大した時には、あふれてLF 帯に流れ込むかもしれない。 加えて、HRV と呼吸の長時間に渡る同調は、共鳴の増大の為LF 帯の増加になって表れる。 同調のほとんどは、快い睡眠の時にみられる。
一般的に、LF 帯もHF 帯と同じように、夜間を通じて増加し起床直前にピークになる傾向がある。 事実、HF とLF は同じようなグラフ曲線を見せるが、常にそうではなく、しばしば独立して異なった時間にピークを見せる。 図13 を見ると、LF もVLF 帯も昼食後下がっている。これは、この期間中血液の流れが胃のほうへ向けられ、血管系統の共鳴に影響を与える為と考えられる。 全ての周波数帯のパワーは、昼食後数時間増加を始め夕方夕食の頃再び下降する。殆どの人がエネルギーの下降を経験する昼食後に、自律神経パワーの減少が起こるのは興味深い。
超低周波
超低周波スペクトルは、HRV パワー・スペクトル帯における0.0033 から0.04 Hz の間の周波数帯の1時間毎の移動平均パワーをプロットしたものである。 一般的にVLF 帯は、夜間安定した率で上昇し、起床直前にピークになる。 図13 に見られるように、VLF は睡眠中HF 帯やLF 帯に比べてより安定して上昇する傾向がある。 VLF においては目立ったピークは比較的少なく、ゆっくりとした律動的かつ安定した増加を示す。
正常化単位での低周波パワーと高周波パワー
以前述べたように、正常化単位でのLF およびHF は、VLFパワーにおける変化がLF およびHF コンポーネントに与える影響を最小限に抑える事によって自律神経の交感神経と副交感神経のコントロール及びバランスをとろうとする行動を強調すると共に、交感迷走神経のバランスについて更に多くの情報を与えてくれる。
正常化された値の1時間毎の移動平均は、24 時間周期リズム分析ページにプロットされている。LFは実線で表され、HFは点線で表されている。 これらは同じグラフにプロットされており、その為正常化単位で強調された交感神経と副交感神経の間のダイナミックなバランスがみられる。 自律神経が、交感神経もしくは副交感神経活動のいずれの変化に対しても近接したバランスを維持しているのは興味深いことである。殆どの若い健康人において、睡眠中HF はLF 線より高く、起きている時はLF 線がHF よりはるかに高い。 この傾向は加齢と共に減少し、これは年と共に交感迷走神経バランスがより高い交感神経/副交感神経比に向かうことを示している。
リズムパターン分析
自律神経分析報告書は、心拍タコグラムの24 時間記録についても行う。 1 時間タコグラム記録が8つ、3ページに渡って表示されている。 1時間タコグラムは、更に点線で5分間のセグメントに分けられている。 時間は、夫々の記録の最後に示されている。 Y 軸の単位はbpm(拍動数/分)で目盛りの範囲は50 から150 bpm である。
時間領域及び周波数領域計算は、これらのタコグラムから導き出されたものである。 グラフにプロットされた値に対応する5 分間セグメントが夫々報告書に示されている。
異常な状態が見つかった場合や、これらの状態が患者のログに記録された症状に関連する場合は、タコグラムの追加ページで、HRV データ拡大図を示すことがしばしばある。 患者に、ログを適切かつ漏れなく記入させ、何かが起こった時に常にその時間を正しく記入するようにさせることは重要なことである。 特定の症状の深い洞察は、多くの場合タコグラムから得られるが、それは患者がこれらの出来事をログに記入してのみ可能である。
タコグラムのいろいろな変化は、基本的に心拍の加速と減速、波長や振幅の変化として説明される。 心拍数が減少したり増加したりする傾向はごく一般的なことである。 多くの個人において、心拍数が加速するとその後より早い減速を見せるが、これは全てにわたって普遍的なものではない。
通常1拍か2拍内で起こる心拍の突然の変化は、上昇もしくは下降を問わず副交感神経による調節であり、他方ゆっくりとした長く継続する変化(通常は増加する)は、交感神経による調節である。 これらは、数分間に渡る短いスパイク波形か、或いは広く高い律動で長く続く。
記録時間中、異なったパターンが異なった時間にあらわれるのは普通である。 例えば、通常夜間に律動的な正弦波に似たパターンが表れる期間があり、これは呼吸、HRV、そして血圧波間の同調を示している。 深い安らかな眠りの間の正常振幅は小さい場合もあり、それを異常と考えてはいけない。 これらの低い活動期間中はパルスが表れ、そして又低い活動に戻る。
低い活動期間からより活動的な期間への突然の移行は、レム睡眠に入り始めたときに起こる。患者は、瞑想、運動、ハート・ロックインのような活動はログに記録しなければならない。 ハート・ロックインを真剣に行うと通常タコグラムにはっきりと表れ、しばしば同調の状態へみちびかれ20~30 分間持続する。 同調の状態は正弦波によって特徴付けられる。 より詳細な説明については参考文献19 を参照。
患者は又、重要な感情状態は記録すべきである。 怒り、不安、心配や同様の感情の影響は、患者によりパターンは異なっても、一般的に波形から容易に読み取れる(例参照)。
まとめ
1拍か2拍で起こる心拍の突然の変化は、上昇・下降いずれの場合も副交感神経の調節で起こる。 ゆっくりした長く続く変化は、交感神経の働きで起こる。
律動的な正常波的パターンは同調を意味し、夜間の初めの部分でより一般的にみられる。同調は、呼吸、心拍変動、血圧波が同調したときに起こる。 患者がハート・ロックインやフリーズ・フレームの技術を習得し実行した時、同調はより大きな割合で起こる事がわかる。
出典資料:IHMのAAA報告書から抜粋


