
HRS PEにおける自律神経トーナスの計算方法と自律神経バランスグラフ
自律神経トーナスの概念は、自律神経調節活動が心拍に与える影響だと考えられている。心拍数を変化させる自律神経調節には、交感神経調節と副交感神経調節の2つがある。
今日、交感神経調節と副交感神経調節の影響を非侵襲的に簡単に評価する方法として、5分間の心拍データを記録し、TP(トータルパワー)、VLF(超低周波)、LF(低周波)、HF(高周波)などの心拍変動指標を求める周波数解析がある。
これらの心拍変動指標の生理学的解釈や特定の自律神経調節活動との関係を考える時、いくつかの異なる意見があるが、交感神経活動の主な指標としてLF、副交感神経活動の指標としてHFを使う方法がかなり一般的である。
VLFはいろいろな要素によって影響され、それらの大部分は心拍に直接影響を与える自律神経調節によるものではないと考えられている。
この事から我々は、異なる意見を考慮に入れても、心拍リズムを直接コントロールする自律神経調節を評価するには、トータルパワーよりはLFとHF指標の方がより良いとの考え方を選んだ。
この考え方に基づいて、LFとHF指標から自律神経トーナスを量的に測定する方法として以下のアプローチを導き出した。

1.交感神経活動(SA)を0から20までの等間隔の尺度に設定し、それを3つの領域に分ける:
a. 0 … 6 – 低レベル
b. 7 … 13 – 正常レベル
c. 12 … 20 – 高レベル
2.この尺度は全ての年齢グループに対して同じである。
3.標準心拍変動解析で、0から10までの定められた尺度上のLF値(自然対数)を計算する。.
4.この尺度には健常値から計算された正常域がある。正常域の幅は被験者の年齢と性に依存している。
5.交感神経活動(SA)の中間値は10に設定されている。
6.正常域の低限は7、高限は13に設定されている。
7.この設定から、標準心拍変動解析で得られた交感神経活動指標であるLF値(自然対数)は以下の数式でSA値に変換できる:
a. SA = A* ln(LF) + B

8.同様に副交感神経活動指標であるHF(自然対数)は以下の数式でPAに変換できる:
a. PA = C * ln(HF) + D
9.次に、SAとPAから自律神経トーナス指標(AT)を計算しなければならない。これを行なうには、SAとPAの2つの指標を0から20までの同じ尺度に変換し、3つの領域に分ける為の、正規化を行なうのが最善の方法である。その為の数式はAT=(SA+PA)/2である。
この図の場合、PA=6、SA=10 であるからAT=8となる。

10.しかしながらこのアプローチで気をつけなければならない事がある。自律神経トーナスは自律神経調節活動の複合的指数であり、生理的状態の全てを説明するものではないところから、これに加えてSAとPAのバランスの量的評価が必要となる。その場合、バランス評価にも同じ方法を使うと明らかな不都合が起こる。例として、SA=20でPA=0の場合、AB=10 となり、ABの数字だけを見るとバランスは完全に正常であるかのように見える。この問題を解決する為、我々はトータルな自律神経バランスを示すグラフとして、AT対AB尺度を使う事にした。
11.ABの計算は、LF/HF(自然対数)を0から20(表記としては-10から+10)までの自律神経バランス(SA/PA)尺度に変換する:

12.従って、SA=20でPA=0の場合、この方法ではABは+10あたりになる。
13.このようにして得られたATとABを同じグラフ上で使って自律神経バランスを示すと、全てが非常にはっきりとした論理的整合性を持つ事が分る:

14.上図のテスト結果を示す点(赤)は、AT値としては自律神経トーナスの正常域にあっても、AB値としてはストレス反応域にあり自律神経バランスは非常にアンバランスな状態にある事が分る。この事から、ATはABから切り離されて評価されるべきでない事が明らかである。


