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呼吸法による自律神経へアプローチするトレーニング-バイオフィードバックトレーニング

特性と目的

RSAとは呼吸によって起こる心拍変動のことである。 心拍数は吸気で増加し呼気で減少する。これは、心拍リズム変動メカニズムの内のひとつである。

通常これらの変動はお互いに重なり合い、その結果心臓の自然のリズムを非常に複雑なものにしている。
RSAは時には、副交感神経の状態をみるための指標として使われる(Porges, 1996)。
呼吸に関係づけられる心拍変動は健常人においては通常0.15~0.4Hz(9~24呼吸数/分)の周波数帯で起こる。この周波数帯の心拍変動はしばしば、“高周波”心拍変動と呼ばれている。
同時に、0.05~0.15Hz(呼吸数3~9回/分)の周波数帯でも大きな振幅変動がみられる。 この周波数帯の心拍変動は、この周波数帯で非常にゆっくりと呼吸しているのでなければ呼吸数には関係していない。

この周波数帯での活動は“低周波”心拍変動を意味し、交感神経系および副交感神経系の両方の活動によって影響される(Berntsonその他、 1997)。 これは他の周波数帯の心拍変動よりも圧受容体反射活動により密接に関係している(Bernardiその他、1994)。

バイオフィードバック訓練の為の手順

被訓練者はまず自分の同調周波数で呼吸する事を教えられる。
最初のステップはRSA変動を最大限に増やす為の訓練である。

最初のセッションでは、被験者に4~7回/分の特定の周波数で呼吸させ、呼吸の深さを出来るだけ一定に保たせる(出来れば呼気終了時点での二酸化炭素量を 計る)。その為、目標呼吸数での呼気と吸気のペースが被験者に分かるようコンピューター画面上で上下する光の呼吸ペーサーを用意し、実験中ストレイン (緊張)計測器で個人の反応を測定する。

被験者はコンピューター画面上に呼吸ペーサーで示された指定の呼吸数で呼吸をし、光の上下の動きに合わせて呼気と吸気をするよう指示される。それに続くセッションで被験者はバイオフィードバックを与えられる。

被験者は翌週1日に2回、それぞれ20分間自分自身の同調周波数で呼吸するよう指示される(訓練中、被験者は過度呼吸を避ける為、自然の浅い呼吸をするように注意される)。

次のセッションで、被験者は心拍変動を起こす為のバイオフィードバックを直接与えられ、呼吸に関連して起こる心拍変動振幅を増やすよう指示される。 拍動間隔測定タコメーターを使って記録し、その測定記録を呼吸活動測定記録に重ね合わせる。

被験者はRSA変動を最大限に増やす目標を与えられ、その為心拍振動と同位相で呼吸するよう指示される。他のディスプレーで、被験者は 0.005~0.4Hzの周波数帯で移動する心拍変動周波数分析をみせられる。 ディスプレーは、心拍変動周波数を1秒ごとに更新して表示する。
被験者は同調周波数の辺りで起こるスペクトルパワーピークを増大するよう指示される。呼吸ペーサーの最高点は1回毎の呼吸に伴うRSA変動に比例するようになっている。心拍数を示す呼吸ペーサーの天井と底は個々の被験者に合わせてセットされ、個々人の心拍数の上限と下限に合わせて調節されなければならない。

RSAフィードバックの臨床的応用

RSAバイオフィードバックの臨床的効果に関する理論は、同調周波数で呼吸することにより圧受容体反射に大きな変動刺激を常習的に与える練習をし、圧受容 体反射を効率的にするという事である。 この方法を、喘息や高血圧や種々の神経障害の治療に使った臨床的例がロシアで出版されている (Chernigovskaya、その他、1990)。

我々は、この技術を使っての喘息の改善例を、ロシアリハビリセンターからの20の連続臨床例のひとつで報告している。(Lehrer、その他、 2000)。しかしながら、これらの研究はコントロールグループを対照にしていない為、観察結果のある部分に被験者選択偏見や、regression to the meanやプラシーボ効果が反映されている可能性がある。
喘息持ちの成人を対象にした対照実験のひとつに(Lehrer、その他1997)、RSAフィードバックが訓練セッション中呼吸インピーダンスの大きな減少を起こすことが報告されている。

しかしながら実験対象となった被験者数が少なかった為、一般的な臨床的改善としての評価はされなかった。このように、この方法は自律神経障害による様々な病状の治療に役立つ事が大きく約束されてはいるものの、その効果を実証するには対照実験を更に行っていかなければならない。

バイオフィードバックと整調呼吸

験者に1分間に6回の呼吸をしなさい言う代わりに、特別のバイオフィードバック技術が必要なのは何故か?

Vaschillo(1984)は正確な心拍同調周波数は個々人それぞれに異なると共に(その為、個々人に要求される正確な呼吸数を決める為のバイオ フィードバックが必要)、それはある期間にわたって変えられる事を発見した。 我々の臨床的経験から、訓練期間中、変動振幅最大値は減少し、その為人に よっては呼吸数の4回/分の近くで最大心拍変動を達成する。

人によってはそんなにゆっくりと呼吸出来ない。 訓練はその為徐々に行わなければならない。 バイオフィードバック技術は、個々人に適した特定のリズムで呼吸させ、ある期間にわたって呼吸と圧受容反射機能の改善を促すようにする。

東洋の呼吸訓練との類似性

東洋のヨガやキゴンや禅の修業は全てゆっくりとした呼吸を伴う。これらの技術を修得した者は、自分の体の必要性とペースで呼吸する事を教えるが、それは多分RSAバイオフィードバック効果に似ていると思われる。

東洋のこれらの修行は事実、個人の心拍同調周波数で呼吸する点において、RSAバイオフィードバック効果と同じ効果を生み出している。最近の座禅中の禅 僧に関する研究で(Lehrer , 1999)、瞑想中の禅僧は心拍変動の低周波帯もしくは超低周波帯で呼吸している事が分かった。
全ての禅僧はゆっくりとした呼吸周波数でRSA変動を増大させており、一人の禅僧においては1分間で1回呼吸し、その周波数帯で特に大きな変動振幅をつくり出していた。この周波数帯は温度調節と交感神経調節を反映するという理論と一致しており、座禅が氷点下以下の状態で行われたにも関わらず、心拍数は上昇し暖かさを感じたとの禅僧の報告がされている。

セラピストの為のインストラクション

呼吸と共に心拍数は上がったり下がったりする。 吸気で心拍数は上がり呼気で下がる。 呼吸によって起こる心拍数の変化をRSA(呼吸洞性不整脈)と呼ぶ。

RSAは、自律神経系全体(心拍数、血圧、呼吸を含む)による調節を助ける為に、体に非常に強力な反射現象を引き起こす。訓練の目的は、心拍変動の大き さを増大させることにある。心拍変動の増大は、これらの重要な反射運動を訓練し体のコントロールをより効率的に行う助けとなる。 訓練にあたっては個人のRSAを測定し、呼吸による心拍情報が被験者に与えられる。

これがRSAフィードバックである。 被験者はこの情報をもとにRSAを増やす為の自己訓練を行う。この訓練を常時行えば自律神経系の調節を行う反射運 動を強化することが出来る。これにより毎日のストレスへの対応能力が増し、健康改善につながるはずである。 これらの反射運動の訓練が、様々な肉体的およ び感情的障害に対処する手助けになる事はこれまでに証明されている。

最強の格闘家であるヒクソングレーシーもオリンピック金メダリスト 室伏広治選手など、多くのトップアスリートも呼吸法によるバイオフィードバックトレーニングを実践しています。

末武 信宏Nobuhiro Suetake

医師・医学博士
さかえクリニック院長
第88回日本美容外科学会会長
日本美容外科学会認定専門医
順天堂大学医学部病院管理学非常勤講師
一般社団法人 先端医科学ウェルネスアカデミー副代表理事
一般社団法人 日本美容内科学会理事
サイエンス・アーティスト

監修者紹介