
自律神経の働きとして、交感神経が優位になれば脈が速まり、副交感神経が優位になれば脈が遅くなるように、交感神経と副交感神経には反比例的な拮抗関係があるようなイメージがありますが、必ずしもすべての身体機能においても同様という訳ではありません。
千葉大学特任教授の朝比奈正人氏のインタビューにてわかりやすく解説されています。以下はインタビューからの引用となります。
交感神経と副交感神経の拮抗によって自律神経が機能するという考え方は、広く現代まで浸透しています。確かに、交感神経が活動するとノルアドレナリンが分泌されて心臓は脈を速め、副交感神経が活動するとアセチルコリンが分泌されて脈を遅くする関係ですが、自律神経が制御する血管、肺、消化管、分泌腺、内分泌腺、生殖器などのあらゆる臓器でも同様か、というとそうとは限らないのです。
汗腺や皮膚の血管は交感神経の支配のみ、副交感神経は関与していません。交感神経は動きを活性化させると言われますが、胃の場合は、副交感神経の作用によって活動が活発になります。唾液では、交感神経、副交感神経がどちらも分泌という方向に作用します。
交感神経と副交感神経がシーソーのように働くという概念が一人歩きして、ラングレーから90年を経た今でも、その発想が固定化してしまったのだろうと推察されますが、この認識も修正されるべき点です。
さらに、研究が進むにつれ、自律神経的な機能が、決して「自律神経」によるものとは限らないことが見えてきました。
例えば、入浴するとお湯につかった部分の皮膚が赤くなります。熱が加わった部分の温度を下げるため皮膚の血管を広げ、多くの血液を送るので赤くなるのです。これは自律神経ではなく、皮膚にある感覚神経あるいは血管自体の反応によるものです。感覚神経が体温以上の熱を感じると、軸索反射という反応を介して感覚神経終末から血管拡張作用を持つカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin generelated peptide;CGRP)が分泌され、皮膚の血管が開きます。さらにCGRPの分泌の調節には交感神経も関与しています。つまり感覚神経と自律神経がクロストークしているのです。
長く入浴していれば熱を逃がすべく、血管を開いた状態に保つ必要があります。神経は、素早い対応は得意ですが、多くのエネルギーを使うので長時間働くのは苦手です。このため感覚神経による血管の拡張は一過性です。長時間熱が加えられると熱は皮膚の血管に伝わり、 血管内皮が刺激されて一酸化窒素(NO)が分泌され、感覚神経による血管拡張より遅れて血管が開きます。
NOは、血管を非常に強く拡張させる作用があります。ということは、熱を放出するという生体内の重要な自律神経的な働きを血管自体が行っているのです。
また自律神経の中枢は視床下部とされていますが、それだけと言い切るのも難しくなってきました。脳の視床下部は、体温調節や時間的な生体リズムなど、長期的な調整機能を司っていることが分かっています。
一方、例えば寝た状態から立ち上がった時に、短時間に血圧が調整され適正に保たれるという働きには、視床下部ではなく、脳幹の中枢が関与しています。
さらに、感情と密接な関係がある脳の辺縁系は自律神経にも関与しています。感情が自律神経と関係していることは、緊張すると手に汗をかくとか、好きな人の前で目がキラキラする(瞳孔が大きくなる)といった経験から、多くの方が実感している事実です。
これらは辺縁系の働きによって交感神経が刺激されたことによるものですし、他の神経系ともクロストークして働いているので「ここからここまでが自律神経」と分けることは難しいのです。
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